食に生きる
型番 ISBN978-4-7807-0624-6
定価 1,572円(税143円)
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はじめに
 
人の一生は「食」に始まり、「食」に終わります。生きるために大切な「食」は、その良し悪しによって人生が左右されるといっても過言ではないと思います。
この「食」に対する専門の職業人である栄養士が国に認められたのは、一九四五(昭和20)年です。教師や看護師などに比べると、まだ新しいことで、今日で六五年が経ちました。この新しい仕事を専門とし、無我夢中で精一杯生きてきた歩みを、「多くの後輩や世間の人にわかっていただこう」と、八三歳になるまでの「食」との関わりや「食」の歴史をつづりました。
一人の人間の生きた時代の中にこそ食の変化、歴史が存在しています。その上に立って考えてこそ、これからの発展もあると思います。明治、大正、昭和、平成という一世紀にわたる食の移り変わりを知っていただけたらと思います。どんな人も食べることによって生きていますが、「食」の大切さを一人ひとりが認識し、生きる「」にしていただけたら幸いです。
八一歳の一昨年、私は日本栄養士会の法人設立五〇周年記念で特別表彰を受彰いたしました。この受彰をきっかけに、栄養士及び管理栄養士の歩んだ歴史をまとめてみようという思いにかられました。というのも、今ほど「食」の問題を考えなくてはならない時代はないと思ったからです。私の「食」にかける一生は、まず母の食事に対する考え方に影響を受けたことから始まります。栄養士になってからは小学校給食での牛乳給食の実現に取り組み、その後病院給食での食物アレルギーや糖尿病などの栄養指導等に力を注ぎましたが、いつもその時々、ぶつかる「食」のあり方を多くの方々と共に、よりよい方法に向かって考え提案し、実践してきました。
また、戦時中日本で初めての陸軍栄養手という職業に就くために学んだことも、それからの自分の生き方を考えさせられるものでした。平和であればこそ、安心して食生活が送れるということを学んだからです。
私の「食」の歩みから、少しでもいろいろな問題をくみ取っていただき、今後に生かしてもらえたら嬉しいと思います。
本書の校正をしていた二〇一一年三月一一日、一〇〇〇年に一度といわれる東日本大震災と津波が発生し、福島第一原発の大事故も併発し、多くの犠牲者を出しました。全国からの支援者の中に被災者の栄養摂取状況の指導、援助に当たっている後輩の栄養士達の活動もあり心強いものを感じます。
一日も早い復興を心から願っています。

「食に生きる」を奨めます

本田さんにお目にかかったのは、三〇年以上も前の事でしょうか。私は当時国立健康・栄養研究所において、基礎的な研究に従事していましたが、同時に国民の健康と食生活についても関心を深めていましたので、栄養士の方々や食料問題の研究者の方々と交流していました。そうした中で本田さんとご一緒する機会が増えていきました。熱心に栄養士としての活動に係わっておられる本田さんの生き方に共感を深めていきました。
本書において、本田さんの生い立ちから、栄養士の道に進まれる経過、そして栄養士としてのご活躍の様子を改めて知ることができました。戦前から、終戦直後の食生活は、現在では遠い過去のこととされているように思います。この時代のわが国の食生活を研究対象とする研究を見ることはほとんどありません。その点でも本書は極めて貴重なものと思います。本田さんの詳細な記述を拝見して、私たちは当時の食生活と今日の日本人の健康問題とのつながりを明らかにする必要性が感じられました。ヨーロッパにおいては、戦中・戦後の食生活と健康の関係から貴重な研究成果が得られています。
私にとってとくに本田さんとの関係を深める機会は、大麦の生理作用に関する研究でした。私は生理作用の強い食物繊維を含む大麦の健康影響をヒトで実際に証明したいと考えていましたので、本田さんに協力をお願いいたしました。ヒトでの研究はすでに2回ほど実施していましたが、さらに厳密な研究にしたいと考えていましたので、当時本田さんのおられた船橋病院に通院中の方々にご協力を得ました。この結果は、ヨーロッパの臨床栄養関係の専門誌で発表することができました。この研究は本田さんの本文中に詳しく述べられています。現在は農林水産省の研究所との共同研究や、大麦の消費推進の活動に発展しており、まったく本田さんのご協力のお陰です。
本田さんが栄養士として地域で、病院で、栄養士会で人々の食生活をとおして健康問題に係われ、またその年数の長さにおいても希有のものです。また、その生き方では、常に問題に正面から取り組まれる探求心、多くの人々を活動の輪に引き込まれる積極性は、多くの人々に学んでいただきたいと思います。食に係わる専門家の方々にぜひご一読をお奨めいたします。


   池上 幸江
                    大妻女子大学名誉教授
                    国立健康・栄養研究所名誉所員

食に生きる
栄養士活動 六五年の軌跡
本田節子
2011年5月1日 初版第1刷
著 者  節子(ほんだ せつこ)
発行者 比留川 洋
発行所 株式会社 本の泉社
〒113-0033 東京都文京区本郷2-25-6
TEL 03-5800-8494 FAX 03-5800-5353
http://www.honnoizumi.co.jp
印 刷 音羽印刷株式会社
製 本 株式会社 難波製本
©2011 Setsuko Honda Printed in Japan
ISBN 978-4-7807-0624-6 C0077 \1429E

※落丁本・乱丁本はお取り替えいたします。
※定価はカバーに表示してあります。

一九二八年 神奈川県藤沢市生まれ
一九四五年 食糧学校(現 学校法人 食糧学院東京栄養食糧専門学校)卒業
      陸軍糧秣本廠教育隊陸軍栄養手候補生
      陸軍栄養手(軍属)として大分少年飛行兵学校へ配属
一九四七年 栄養士免許 第74号 千葉県知事
      千葉県印旛郡久住村立久住中学校助教諭
一九四八年 生活改良普及員(国家資格昭和23年合格 千葉県第三号)
一九四九年 千葉県農林部農業改良課生活改良係
一九六一年 千葉県船橋市教育委員会保健体育課 学校給食栄養士
一九六四年 船橋市 南浜病院栄養主任
一九八一年 船橋市 船橋二和病院 栄養科長
一九八五年 管理栄養士登録 第26080号
一九九一年 船橋二和病院定年退職
一九九二〜二〇〇五年 栄養・食事相談・講演・調理講習の活動を継続
現在 社団法人千葉県栄養士会病院栄養士協議会顧問、船橋市栄養士会名誉会員・顧問
公益財団法人日本アレルギー協会会員
主な受賞
一九八四年 千葉県栄養改善学会 栄養改善奨励賞 受賞
一九八五年 日本栄養士会長表彰(第27回総会において長年にわたる国民の栄養改善の功績)
一九八六年 千葉県知事賞受賞(栄養指導業務)
一九八七年 厚生大臣賞受賞(栄養指導業務)
二〇〇〇年 船橋市長表彰(市政施行70周年、発展に尽力)
二〇〇二年 千葉県栄養改善学会 栄養改善奨励賞 受賞
二〇〇九年 日本栄養士会長表彰(法人設立50周年記念 特別表彰)

この間、日本栄養改善学会、日本糖尿病学会、日本アレルギー学会、日本小児アレルギー学会をはじめ、多くの学会、研究活動に参加。主な役職としては千葉県栄養士会病院栄養士協議会常任幹事、船橋市栄養士会会長、千葉県船橋保健所保健事業連絡協議会委員、船橋市母子保健推進協議会委員、鎌ヶ谷市健康づくり推進協議会委員、日本栄養士会病院栄養士協議会全国理事、全日本民医連栄養世話人など歴任

主な著作
「一品料理献立集」(共著 1991年医歯薬出版)
「お母さんが作ったアレルギーっ子のレシピ」毎日の食事・お弁当・おやつとパン(監修 1996年 NHK出版)
「食物アレルギー食事療法の実際」(講演録、1994年 全国自治体病院協議会)
「アレルギーと食・環境」(共著、2001年 食べもの通信社)などのほか諸紙誌への執筆多数
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