複雑系科学の哲学理論
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菅野 礼司:編
A5判 200ページ 並製
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ISBN978-4-7807-1122-6 C1010
2013/9発行(2013/10発売)


《目次》
第1 章 複雑系科学とは:複雑系科学の位置づけ 9
 ( 1 )「存在の科学」と「発展の科学」 9
   複雑系科学とは、複雑系科学の特性、
 ( 2 )第三科学革命:発展・進化の科学の誕生 12

第2 章 複雑系科学の基礎概念 15
 ( 1 )物質系の構造や状態に関する概念 15
   非平衡散逸開放系、散逸構造、対称性、フラクタル
 ( 2 )力学的作用に関する概念 19
エネルギーとエントロピー、エントロピー増大の法則(熱力学第2法則)、エネルギーとエントロピーの関係、シナジー作用(協同作用)
 ( 3 )状態変化に関する概念 23
   相転移、対称性の破れ、発展・進化、可逆性と不可逆性、
   発展・進化の不可逆性:だがミクロの素過程は可逆的、
   時間の矢:エントロピー的時間、アトラクター、カオス

第3 章 自然界の階層性 31
 ( 1 )自然の多様性と階層性 31
階層性とは:ミクロの階層、マクロの階層、階層を区別するもの
 ( 2 )物質の階層性 36
   各階層には固有の構造と法則、階層時間
 ( 3 )力の階層性 39
力(相互作用)の3 要素、相互作用(力)の階層性、相互作用の閉じ込め(遮蔽)、力の多様性

第4 章 対称性の破れと自然界の多様性 46
 ( 1 )自然科学における対称性の意義 46
   対称性概念の拡張
 ( 2 )対称性の破れ 48
   自発的対称性の破れ:自己組織化
自発的対称性の破れに関する南部理論、ヒグス場による真空の相転移
 ( 3 )相互作用の統一理論:統一的相互作用の分岐 54
   弱電統一相互作用の分岐、 質量の起源、
   相転移による対称性の破れ−自然の多様性

第5 章 物質の自己発展性・自己組織化 58
 ( 1 )体系 (system):相対的に安定な部分系 58
 ( 2 )自己組織化とは 59
 ( 3 )相転移 62
   相転移の本質、 量による質の転化、
 ( 4 )複雑系の条件 64
   接続電球のネットワークモデル、Nの法則、複雑系の主な特徴
 ( 5 )自己触媒の発生 71
 ( 6 )相転移による自己組織化、階層の形成 72
   階層の生成と対称性の破れ、 自然界(宇宙)のアトラクター
   発展・進化系の必要条件
 ( 7 )定常性の維持と否定の対立拮抗 76

第6 章 物質進化の定義と進化の機構 79
 ( 1 )進化とは何か 79
   進化の意味は単純ではない、
 ( 2 )物質系の運動と発展・進化 82
   エネルギー、エントロピー、シナジー
 ( 3 )物質系進化の評価基準−進化度の定義 85
   物質進化の必要条件
 ( 4 )エントロピーとエネルギーの放出機構 90
   体積膨張−閉鎖系でも可能なエントロピー減少機構、
   化学ポテンシャルや輻射による放出
 ( 5 )地球のエントロピー放出機構 93
地球上での散逸構造発生の源は太陽エネルギー
 ( 6 )階層構造と進化 96
 ( 7 )散逸構造とその生成:自己組織化 97
   カオスの縁、複雑適応系
 ( 8 )自己組織化と自然淘汰(自然選択) 103
   適応進化
 ( 9 )物質系の自己発展と自己反映 105
   自然科学は自然自体の自己反映

第7 章 進化現象の不可逆性について 108
 ( 1 )可逆性と不可逆性 109
 ( 2 )エントロピー増大則と宇宙進化は矛盾しない 109
   エントロピーの放出と収納機構
 ( 3 )宇宙のエントロピー散逸機構と宇宙進化 113
   エネルギーはエントロピーを生みだし、かつ収納する原動力
   宇宙膨張は発展・進化の必要条件を用意
 ( 4 )発展・進化の不可逆性:ミクロの素過程は可逆的 117
   非線形性による場合、時間の矢について

第8 章 不確実性と確率的予測 122
 ( 1 )複雑系の発展・進化過程の不確実性と予測不可能性の要因 122
非線形性によるもの、カオス性によるもの、2 次・3 次情報(創発)
によるもの、揺らぎによるもの
 ( 2 )確率的選択則とその解釈 127
決定論での予測不可能性について、揺らぎによる予測不可能性
 ( 3 )確率的予測は原理的なものでなく、不可避的なものとは限らない 130
 ( 4 )量子力学的確率法則とは異質 131

第9 章 複雑系科学の哲学 134
 ( 1 )時間とその不可逆性について 134
   時間は運動のうちに在る、時間の可逆
 ( 2 )「実体」の存在について 137
   変化のなかの自己同一性、
   物質の本性は相互連関と運動:実体は消えたか?
 ( 3 )相対的実体の意義: 階層における実体 139
 ( 4 )部分と全体: 創発の形態 140
   階層間の相互規定性
 ( 5 )分析法、特に要素還元法の有効性と限界 142
   分析的方法の形態、 分析的方法の根拠、
   下からと上からのアプローチ(分析と総合)の協力が必要
 ( 6 )複雑系科学における分析法 147
   創発について
 ( 7 )複雑系と自然弁証法 149
   複雑系における対立概念とその対立拮抗、
   対称性の破れと自然の進化:なぜ自然界の対称性が破れるのか?
   宇宙・物質の自己発展性
 ( 8 )自然科学は自然自体の自己反映活動 154
科学の不完全性:自己言及型の論理、「観測」が理論体系の中に入る、
量子論の不確定性関係、自然の仕組み:相互規定的存在の理法
 ( 9 )自然科学と価値観 161
自然科学は没価値的理論か、対称性の破れと「価値」概念、
科学理論に含まれうる「価値」概念、技術の価値

第10 章 科学理論の形成過程と進歩−複雑系科学の観点から 171
 ( 1 )科学理論の基本的性格 171
 ( 2 )科学のサイバネティクス的構造 173
 ( 3 )理論体系の構造 174
演繹的体系、理論体系の完備性、理論体系のネットワーク構造
相互規定的循環構造
 ( 4 )法則と理論体系の形成 177
規則性・法則の形成、理論の体系化とその成長
 ( 5 )複雑系としての科学 179
協同性効果、理論体系は散逸構造、理論体系の自己発展、
科学革命は「自己否定的脱胎」、科学革命はカオス的相転移、
新分野の誕生
 ( 6 )科学革命の連続性と不連続性 184

終章 完備な複雑系科学を目指して 187
 ( 1 )素過程の力学とマクロの熱力学 187
ニュートン力学、熱力学、熱統計力学:ミクロとマクロを繋ぐもの
 ( 2 )複雑系科学でミクロとマクロを結ぶもの 192
「自然論(じねんろん)」と創発


《前書きなど》
本書は、その研究会(複雑系科学研究会)で報告した拙論を主軸にして、複雑系科学の方法と論理を科学哲学の観点から総合的に纏めたものである。筆者は複雑系科学の専門家でないので、取りあげた課題は物理学を中心としたために、内容が偏っていて不十分であるだろうし、誤解もあるかも知れない。そこで偏向や誤りを正すために、初稿に対するご意見・コメントを研究会のメンバーや知人から寄せて頂いた。それらのコメントを基にして、筆者がその後考えた事柄を加筆し、修正したものが本稿である。ここに一人ひとりお名前を挙げないが、貴重なご意見を頂いた方々に感謝の意を表したい。
(「まえがき」より抜粋)


《著者プロフィール》
菅野 礼司(スガノ レイジ)
1930 年 千葉県生まれ。
1954 年 京都大学大学院理学研究科博士課程修了、理学博士。
1994 年 大阪市立大学理学部退職;現在 同名誉教授。
専門:素粒子論、科学論
日本科学者会議参与、大阪支部代表幹事

主な著書:
『物理学の論理と方法・上下』(大月書店)、『微分形式による解析力学』(共著)
(吉岡書店)、『東の科学・西の科学』(共著)(東方出版)、『微分形式による特
殊相対論』(丸善)、『科学は「自然」をどう語ってきたか』(ミネルヴァ書房;
日刊工業新聞 技術科学図書優秀賞)、『科学はこうして発展した』(せせらぎ
出版)、『ゲージ理論の解析力学』(吉岡書店)、『物理学とは何かを理解するた
めに』(吉岡書店)、その他。
素粒子論、科学論、科学教育の論文多数。
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