文学の授業5 改訂版 やまなし 教材分析と全発問
型番 ISBN978-4-7807-1114-1 C3037
定価 1,540円(税140円)
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山口 憲明:著
B5判 152ページ 並製
定価:1,400円+税
ISBN978-4-7807-1114-1 C3037

やまなしとは、山に自生する梨。ズミという木で地方によりコナシ、コリンゴなどとよばれ、秋には黄色や赤色のたまご形の実をつけるそうです。
この題名「やまなし」は、この物語では、主題を示します。やまなしの行動そのものが、主題です。そして、この『やまなし』は、物語の後半、それも十二月の後半になって出てきます。なぜ物語の終わり近くにやっと出てくる『やまなし』が、この物語の題名なのか。つまり仕掛を含んだ題名になっています。仕掛とは、読者に疑問や期待感をもたせ、先へ先へと読む気にさせるための工夫です。
(「物語『やまなし』の教材分析」から抜粋)

目次
文学教育に取り組もう 4
物語『やまなし』の教材分析 9
1 題名 「やまなし」について 9
2 構成と内容 10
3 表現の特徴 13
4 主題 「献身」 20
単元計画 20
各一時間の流し方 21
授業を始めるにあたって 22
『やまなし』の授業 23
第一次 題名・前書きの読み 23
第二次 「五月」の世界を読む 29
「五月」❶ 青く暗く鋼のように見える五月の谷川。 29
「五月」❷ くり返しクラムボンは笑い、あわが流れる。 38
「五月」❸ 魚の登場。魚が頭上を過ぎてクラムボンが殺される。 44
「五月」❹ 魚がもどって、クラムボンは笑う。谷川が明るくなる。 50
「五月」❺ 魚は取っている。悪いことをしている。 56
「五月」❻ ひれも尾も動かさない魚。その魚へ敬語が使われる。 64
「五月」❼ かわせみが飛びこんでくる。一瞬のうちに魚の姿が消える。 72
「五月」❽ ふるえる子がにたち。あわといっしょに天井を白い花がすべる。 81
第三次 「十二月」の世界を読む 92
「十二月」❶ 白い丸石、水晶、金雲母。波が青白い炎を燃やす。 92
「十二月」❷ あわの大きさを競い合うかにの兄弟。 100
「十二月」❸ 落ちてきたやまなし。水の中がいいにおいでいっぱいになる。
       おどるようにして、やまなしを追うかにの親子。 108
「十二月」❹ 自らを布施するやまなし。炎を上げる十二月の谷川。 120
第四次 感想文を書く 131
前書きなど
今、学校教育において、文学が文学として読まれていない。指導されていない。ここでは、まず文学教育、物語教材を指導するそのねらいを短く示したいと思います。まずそのねらいを、私が学んできた西郷竹彦文芸学のことばから紹介します。

〜〜〜

そして、この物語『やまなし』です。一言で言えば、この物語は人物像ではなく、世界観です。どんな人間を理想とするかではなく、どんな世界を理想とするかです。
この物語『やまなし』では、「五月」とはどんな世界なのか。「十二月」とはどんな世界なのか。そして、作者・宮沢賢治の願う世界はどんな世界なのか、どこにあるのかを追求していくのです。小学校生活の終わりに、中学校生活の入り口にあって、人物像から世界観へ、「世界」の意味、ほんとうの「世界」を問い、追求していく読みをこの作品から始めていくのです。そのようにこの物語『やまなし』は、位置づくのです。

文学を文学として読む。場面ごとにことば、文、文章をていねいにおさえ、イメージ化し、登場人物の行動に同情したり、怒ったり、そしてその意味を追求していくのです。ことばの理解、読解力の向上、豊かな情感、人間認識、世界観の探究。これが子どもたちのことばの発達、文学の価値、そのあり方にそった“読み”の姿だと考えます。
文学に真摯に向き合い学んだ時、子どもたちが、クラスが、ふと静かに落ちつくのを感じます。子どもたちが、人へのやさしさや考え深さを見せ始めるのです。
(「文学教育に取り組もう」から抜粋)

著者プロフィール
山口 憲明(ヤマグチ ノリアキ)
早稲田大学政治経済学部卒
元相模原市立小学校教諭
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